さていよいよ明日、“あの”ベストセラーで小泉前首相も愛読していたという『信長の棺』のドラマが放送されますが、どのような出来か今から楽しみにしている織田創です。
主人公は松本幸四郎さん演じる太田牛一。いわずと知れた『信長公記』の著者であります。今回はその『信長公記』に記されている逸話のご紹介。

『信長好感度アップ大作戦』第二弾です!
ときは天正3年、長篠・設楽原の合戦があった頃の話です。
美濃と近江の国境に山中という村があり、そこで身体に障害のある者が乞食をしていたそうです。

京への行き来の際、何度かこの者を見かけた信長は疑問を抱き、村人に尋ねます。
「なぜあの者は、いつもあそこにいるのじゃ?たいていの乞食は住居を定めずさすらうのではないか?」
村の者が申すには「あの者の先祖は山中の宿で常盤御前を殺し、その報いで殺した者の子孫は代々身体に障害をもって生まれ乞食をする定めとなっています。“山中の猿”と呼ばれているのはあの者のことでございます。」

ちなみにご存知の方も多いと思いますが常盤御前とは源義経の母です。
このやり取りがあってしばらくしたある日、急遽上洛することになった信長ですがふと哀れな“山中の猿”のことを思い出し、自ら木綿二十反を用意します。

山中の宿に差し掛かると馬を止め、村人全員を集めるよう命じます。
何事かと恐るおそる集まった村人たちですが、信長はまず、木綿二十反を“山中の猿”に下賜し、村人に命じます。
「この木綿の半分を費用に当て小屋を作りこの者(山中の猿)を住まわせ、飢え死にしないようにみなで面倒を見てやるのじゃ」
さらに近隣の村人にも「年に二回、麦や米の収穫のとき各自負担にならない程度でよいのでこの者に少しずつ与えてくれればわしはうれしく思う」と付け加えました。

この情け深い配慮に“山中の猿”はもちろんのこと、村人や信長の共の者も皆涙し、そして、誰からともなく銭を差し出すものが次々と現れたそうです。
冷酷非情な面ばかり強調される信長ですが、このようなやさしい一面も持ち合わせていました。


【信長の棺 情報】
加藤廣著 日本経済新聞社信長の棺『信長の棺』あまなつAdhover 信長の棺

テレビ朝日 日曜洋画劇場 特別企画『信長の棺』 11月5日夜9時放送